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2018年03月13日

135/刻み

いよいよ、山から降ろされ、荒製材された淡路島の檜たちが大工さんの手によって加工されていく。現在ではほとんどの住宅がプレカットと呼ばれ工場で機械によって加工された木材がプラモデルのように組み立てられるのが主流である。林野庁によると、木造住宅の建築の際は、従来は大工が現場で継手や仕口を加工していたが、昭和50年代になるとプレカット材が開発され、さらに昭和60年代には、コンピューターに住宅の構造を入力すると部材加工の情報が自動で生成され、これを基にコンピューター制御により機械で加工するシステム(「プレカットCAD/CAMシステム」)が開発された。プレカット材は、施工期間の短縮や施工コストの低減等のメリットがあることから、木造住宅の建築現場において利用が拡大しており、平成26(2014)年には、木造軸組構法におけるプレカット材の利用率は90%に達しているという。
では、なぜあえて今のこの時代大工さんの手による刻みを選択したのか。今のこの時代だからともいえるが、明確な理由はまだない。職人の技術の継承。それもあるが、そこまで個人で背負うことはできない。複雑な仕口は、まだまだプレカットにはできない部分でもあるし、金物ばかりでガチガチに固められる木造の家も本来ではないと思う。しかし、それもプレカットの技術の向上によって、大工さんは機械にとって代わられてしまう。そう、目に見える、数字に表せる部分では機械には勝てない。木という自然のもの、伐られた後も、家が建ってからも動く木。微妙な気候の変化や、一本一本違う特性。それを扱うのは、機械のように一辺倒のやり方ではなく、今までの経験や勘など、数字で表しにくい人の知恵にあると思う。コストが大幅に上がってしまうやり方ではあるが、50年100年単位で見たときにこのコストは小さいものに変わるはずである。そう信じている。

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