2017年07月05日
104/Wallstat
いまだに工法について最終の判断がつけられないままでいるなかで、参考になればと思って、
路瓦工業組合主催の「瓦屋根木造住宅の耐震性検証」
講師:中川貴文 へ行ってきた。
中川先生は「Wallstat」という木造住宅の建物全体の地震時の損傷状況や倒壊過程をシミュレーションする数値解析プログラムを開発された。ほぼ、実物の振動台実験や実際に起こった地震の倒壊をおなじように再現できるという。講演では、様々なシミュレーションを通して検証を行う。この度の熊本地震、兵庫県南部地震など実際に起こった地震動を入れて、いくつかの工法、伝統工法、旧耐震基準、最新基準などを比較していく。詳しくは端折るが、1950年の旧耐震基準、1981年の新耐震基準、2000年の最新基準と耐震基準は大きな地震の後に改正が繰り返され、より厳しく安全な基準へとなっている。この度の熊本益城町の被害状況をみてもそれぞれの耐震基準によって、旧耐震基準94.8%、新耐震基準年79.6%、最新基準38.6%と大きく建物の被害は下がっているのである。ただ、現在の最新基準でみても40%近い建物が被害を受けていることになる。これは瓦屋根だから弱いとか、伝統工法だから弱いとかではなく、すべての工法において絶対に安全というものはなく、それぞれの長所短所を見ながら性能を明確にしておくということが必要になってくる。基準を満たしていても、基準以上の地震が来ればもちろん被害を受ける。どれくらいの地震を想定して、どれくらいの被害でとどめることができるかの想定が必要で、最新基準+αの想定が求められている。伝統を守りたい、技術を継承したい、デザイン的にいいものにしたい、地産地消をこころがけたいなど様々な想いはそれぞれにあると思うが、設計士としては、まずは安全な住む場所を作ることが絶対条件である。