2017年05月26日
089/祈りのかたち
打ち合わせの合間を縫って、期間の終盤に迫っていた「祈りのかたち~知られざる建築儀式の世界」に竹中大工道具館へ。竹中大工道具館は名前の通り竹中工務店の運営する大工に関する博物館である。大工道具の展示を中心に伝統的な構法や木材について詳しく紹介されている。建築の素晴らしさを学べる良い施設なので、ぜひ行ってみてほしい。建物自体も淡路島の瓦や左官を使っていたりと見ごたえ十分である。
展覧会より
人々は古来より土地、樹木、建築などさまざまなモノに神が宿ると考え、そこに人の手を加えるときには「祈り」をささげることで、神々の御心を鎮め、安全を祈願してきた、建築工事においても地鎮祭から竣工式に至るまで様々な儀式はとりおこなわれる。そこには現代社会では失われつつある人と自然と建築の豊かな関係性が今でも息づいている。
現在の儀式のかたちになるには様々な変遷があるようだが、原初的な型式を伊勢神宮の式年遷宮にみることができる。平成25年に62回目の遷宮が行われた。20年ごとに社殿を作り変えることで常に新しい状態にありながら、古式を伝える世界でも稀に見るシステムである。神宮式年遷宮は23の祭礼が行われる。細かい説明は端折るが代表的なもので、用材のための祭礼が、山口祭-御杣始祭-御船代祭-御木曳初祭-木造始祭-御木曳行事。建築の祭礼が、鎮地祭(今の地鎮祭)-宇治橋渡始式-立柱祭-上棟祭-ノキ付祭-甍祭-御白石持行事-御戸祭-心御柱奉建-後鎮祭。
現在の建築工事で行われるのは、地鎮祭-上棟式-竣工式の大きく3つ。最近では2つのところが多いか。材木は商品としての流通しか知らなかった我々にとって用材の儀式は見ることすらなくなっている。今となっては、かたちのみが儀式として残っているが、儀式の意味を知ることによって先人たちの建築に対する考え方、自然に対する姿勢などを知ることができる。自然から資源をいただき、土地に手を加え、人の手で建築を作る限り、祈りの儀式は行われる。