2017年07月06日
105/畳の愉楽
畳という素材について、それほど好意的な印象もなく、どちらかといえばなくてもいいような存在であった。この文章を読んで、畳も良いものだと思いを変えさせられた。
長くて均質に生えるい草の茎を強靭な麻紐や綿紐で編んで畳表とし、稲藁の床を何層も重ねた土台を覆って、一対二の比率の床材ユニットとして仕上げられたものが畳である。なんという手の込んだ仕事だろう。い草という植物の丈も一間という日本建築のモデュール形成に一役買っているのかもしれない。一本のい草の長さがおのずと決める九十センチ前後の畳の幅が半間。乾燥させた植物を敷き詰めるという発想は、それだけで心地よさそうだが、それを精緻の構造として具現していく「技」あるいは「心意気」にあらためて感じ入った。やはり踏み心地、寝転び心地は、天然稲藁の床にい草の畳表である。
-住むNo.47どこかにある-原研哉
どれだけ物事の表面しか見えていないか、知らないということが物事の選択肢を勝手に狭める。